第二言語習得学会 The Japan Second Language Association

会長挨拶

   日本第二言語習得学会 (J-SLA) は第二言語習得 (SLA) のメカニズムを研究する学会です。2001年に創設され、それ以来ほぼ20年にわたって年次大会・秋の研修会の開催、学会誌 Second Language の発行など活発に活動してきました。さらに、2016年にはPacSLRF (環太平洋第二言語研究フォーラム) という国際学会を主催し、日本内外から300人以上の参加が集まりました。J-SLAは実証的・理論的SLA研究を行う学会として定着したと言えるでしょう。
 一方、時折J-SLAが誤解されていると感じることがあります。その誤解に基づきJ-SLAから距離をおく研究者や教師がいるようです。以下では、そのような誤解を3つ取り上げ、その要因を考察することによりJ-SLAがどのような学会であるかを明らかにしたいと思います。

 誤解1:J-SLAはUGに基づくSLA研究を行う学会である。

   J-SLAが設立された2001年頃には、チョムスキーの原理とパラメータのアプローチに基づきSLAにおける「UG (普遍文法) へのアクセス可能性」が盛んに議論されていました。そのため、J-SLAの初期にはUGに基づくSLA研究が中心的であり、このことがJ-SLAと “UG-based SLA” の結びつきを強くしたと考えられます。しかし、その後のSLAにおける理論的枠組みの多様化にともない、この結びつきも弱まってきています。J-SLAは、SLAのメカニズム解明には理論が必要であると考えますが、決してどれか1つの理論的枠組みで行われた研究のみを扱う団体ではありません。J-SLAでは様々な理論 (例.UG、用法基盤モデル、認知主義理論、機能主義理論、社会文化理論) に基づくSLA研究を歓迎いたします。

 誤解2:J-SLAは第二言語教育には関心がない。

   確かにJ-SLAはSLAのメカニズムに焦点を当て、第二言語教育そのものは研究対象としません。しかし、このことはJ-SLAがSLA研究と第二言語教育は無関係であると考えているということではありません。その反対に、J-SLAはSLA研究は第二言語教育に重要な示唆をもたらすと考えています。効果的な第二言語教育法を考えるに際に、第二言語習得プロセスの理解が役に立つのは当然です。実際、J-SLA会員のほとんどが第二言語研究者のみならず第二言語教師・学習者でもあり、第二言語の教授法・学習法にも大いに関心を持っています。また、指導を受けたSLA研究 “instructed SLA” も、SLAメカニズに光を当てるものであれば、J-SLAにおける重要な研究分野の1つであります。

 誤解3:J-SLAは英語の第二言語習得研究に特化した学会である。

   日本を拠点とする学会として、J-SLAでは英語の第二言語習得研究が取り上げられることが多いのは確かです (その次に多いのが日本語の第二言語習得研究)。しかしながら、J-SLAは英語(または日本語)の第二言語習得研究に特化した学会ではありません。SLAのメカニズム全般の解明には様々な第二言語のデータが必要であることは当然であり、この認識に基づき、J-SLAでは様々な言語の第二言語習得研究を募集しています。

 まとめると、J-SLAはSLAに興味があり、そのメカニズムの理解を深めたい人たちの集まりです。もしこれが魅力的だと感じたら、ぜひJ-SLAに参加してください。私たちはフレンドリーな団体で、SLAは科学的に研究する価値があるものであると心から信じています、このSLAに対する情熱を皆さまとぜひ共有したいと思っています。日本国内のみならず、世界におけるSLA研究の増進に手を貸していただけないでしょうか。それを通じてSLAという学問分野の発展に貢献しようではありませんか!

稲垣俊史
日本第二言語習得学会会長
同志社大学教授

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